【報告】2023年度グローバル市民講座「平和な世界をつくる一人として~『わたし』にできること」を開催しました。

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2023年度 グローバル市民講座
平和な世界をつくる一人として~「わたし」にできること

終わりが見えないウクライナでの戦争…。
今年のグローバル市民講座は「ウクライナ」という国をテーマに、お二人のゲストをお招きして行いました。

上村 眞由さん(NPO法人SunPanSa(サンパンサ)理事長)


「ウクライナ戦争から何を学ぶ」と題し、ウクライナの歴史や昨年の3~4月にウクライナを訪れた際のお話、そして、ロシアがなぜウクライナを侵攻したのか、私たちにはなにができるのか、について語ってくださいました。
ウクライナ、という国の風土、キーウ大学の歴史、ロシアとの関係、そしてウクライナ侵攻後どうしてもウクライナに行きたいと外務省の反対があっても、どんなに危険があっても「行った」話。そして、現実を見て、何ができるのかと、ウクライナの傷病者を日本に受け入れ、また日本の救急車をウクライナに寄付するといった活動をされました。
最後に上村さんはこう話されました。
「今は対立や分裂の時代です。そして完全に解り得ない他者がいることは確かです。この事実を受け入れて共に生きていくためには何がいるのか、そして、どうすればそれを乗り越えて、相手の自由や価値観を尊重しながら社会の共同性や普遍な知能のルールを構築していくことが可能なのかどうか。非常に大きな転機の時代に生きているという認識を共有したい。
私たち人類の歴史の中で非常に大きな変革は、第一次変革はやはり産業革命とフランス革命のこの時期でしょう。これを第一次変革と見ております。
産業革命、この資本主義の勃興、いわゆる商品を作ることの意味は、私たちの社会を非常に大きく変えた要因の1つです。もう1つはフランス革命。これは身分制度を大きく変えました。
この2つの革命は、私たちの資本主義には紆余曲折がありましたが、大きな要因であり、1つの流れをつくりました。フランスの思想がアメリカの独立戦争への精神的な支えになっています。産業革命は、イギリスからベルギー、オランダ、フランスを通じ、そして後発ながらドイツや日本も資本主義の手配をしていくという流れをつくりました。
私たちは今その2次変革に立ってるかもしれない。私たち人間同士の関係だけではなく、情報やIT関係の問題がこれから大きな問題になっていくであろうことも事実です。そして、今SDGsなんて言われているような問題、これも非常にクローズアップされています。私たちの大きな課題を乗り越えていかなくては、未来も平和もないと言っても過言ではない。そのために私たちはもっともっと世界を知る必要がまずある。
そして、平和を作るのには、1人1人がその平和を作るその努力を続けていく。他人任せではない。小学校などいろんな場で講演をします。「平和ってなんですか」と質問をすると、「戦争がないことです」といった答えを言います。非常に安易です。ウクライナの小学校と日本の小学校を交流させたいという思いもあったのですが、平和に対しての意識が全然違う。こんなにも違って、日本の子どもたちは交流できるのだろうか、という思いです。
もう一つ大切なこと。1人では平和は作れない、ということです。この2つの命題がある。皆さんと話し合いたい、そんな思いです。」

神田 すみれさん(あいち・なごやウクライナ避難者支援ネットワーク/多文化ソーシャルワーカー・愛知県立大学多文化共生研究所客員共同研究員)

多文化共生ソーシャルワーカーとして、主に愛知県を中心に日本に暮らす外国人の方が抱える心理的、社会的問題、困りごとの相談にのり、その解決のために自治体や企業をつなぐ仕事をされています。また、あいち・なごやウクライナ避難者支援ネットワークにも参画され、避難された方の日本での暮らしのサポートをされています。
難民、避難民の方の多くの課題が、言葉、住まい、就労、そして教育、と言われています。神田さんは、愛知県内で避難民が点在している自治体を訪問し担当の職員に現状の確認や、見守りや必要な支援が受けられているかどうかの確認をしています。ウクライナの人が日本に避難され始めた当初、「ウクライナの人を雇用する」と言っていた企業はとても多かったそうです。神田さんは「企業の皆さんに思いがあるんだ。すごく大きな希望だ」とその状況をとても嬉しくおもわれたそうです。しかし、戦争が終わらずいつ帰国できるかわからない、日本語ができない方たちにお願いできる仕事は限られており、ウクライナの方が持っているキャリアや背景、スキルを生かす仕事までにはいかない現状がありました。神田さんは、「経済的な面もですが、難民が社会との繋がりを作ったり、主体的に社会に関わっていったり、自己肯定に繋がっていくという意味で、雇用はすごく大事だと思います。また、移民、難民、外国の人たちに共通する課題である、言葉の習得と子どもの教育、住まいと雇用の保障を日本の社会全体で応援することがとても大事だと思います。」と話されます。
最後、神田さんはこう話されます。
「ただ、一方で、避難民の支援や寄り添うことはとても大事だけれど、結局、戦争を止めなければどんどん被害が大きくなってしまう、ということです。難民の受け入れや、外国人がもっと暮らしやすい社会を作っていくという意味ではすごく大きな変化が起こっているとこの数年感じますが、やはり彼らが自国で安心して生活できる社会を作らなければならない。戦争だけではありません。最近は「日本が選ばれる国にならないといけない。日本に来てもらおう」とかなり言われ始めています。私はそれにはあまり賛成していません。日本人が困っているところ、日本の人口減少を他の国の人に来てもらって埋めてもらうことは違うのではないかと思います。

ウクライナの方もアフガニスタンの方も、戦争が終われば、紛争がなくなれば、自分の国で安心して暮らせるようになります。自分の国で、経済的な心配なく、自分の家族と一緒に生活ができるのであればそれが1番だと思います。まずはその根源的な問題をどうしたらいいのか、です。
私たちは目の前にいる人に対して、いろいろ働きかけはできますが、大きな戦争をどうしたらやめさせられるのか、何ができるのかもわからない。ちょっと前にアフガニスタンの難民の人たちに言われました。『自分たちは生贄だから世界はもう私たちのことは関心を持っていない。自分の国の利益になる人は助けるけれど、アフガニスタンの人を助けても何も利益にならないからみんな無視してるでしょ』と。心が痛く、でもそれが本当のところで、それをどう変えていけるか。
住居のこともそうです。必要な人には住居を提供して、安心して暮らせる、住居のような必要最低限のことはきちんと社会が保障する。そのような社会にしなければいけません。日本は難民条約に批准しているので、難民をきちんと受け入れて、その人たちが安心して暮らせる生活を保証する義務があります。しかし、それが今できていないところも大きな問題だと思います。」

講演の後少しの時間、参加者がペアになって「わたしにできることはなにか」をテーマに話しあいの時間をもちました。

上村さん、神田さんのお話から深く考えさせられました。上村さんが「始まった戦争は止められない」「平和をつくるための努力をコツコツ積み重ねるしかない」と話されたことが強く残っています。決してあきらめてはいけない。
神田さんのお話にあった「ウクライナとアフガニスタン、国によって行政の対応が違うこと」「日本社会が抱えている課題をどう改善していくか」を考え続け、伝え続けることの大切さも共有できました。子ども達への教育の内容、あり方も考えさせられました。大人が変わらないと教育内容や教育のあり方も変わらない。
私には何ができるのか。考え続け、動くこと。動かないと何も変わらない。
小さなことでも一緒に始められたらと、この講座を締めくくりました。

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